日常の暮らしのなかで心地よく使って頂ければと想い生み出している器たち。
まずは道具としてきちんとお使い頂けることを大切に、素材にこだわり、丁寧な技術で、暮らしと調和するように心がけているこの器たちは、見た目は地味なものも多いかもしれませんが、贈られたのちもしっかりとお使い頂けるという点では、贈る方も、頂く方も、共に喜んで頂けるのではと願っています。
最近では、引き出物や内祝い、出産祝いなどの記念日の贈りものとしてご依頼いただく事も増え、改めてきちんとものづくりをしなければならないと心しています。
しかし、20年ほど前までは、私たちの器は、あまり贈りものとして、特に引き出ものとしてお選びいただく事はありませんでした。
(深山のものづくりの風景)
なぜ、引き出もので使われる機会が少なかったかというと、かつて引き出物には【大きさ】と【内容量】を求められる時代がありました。
それは例えば、一つの引き出物の中にコーヒーカップとソーサーのセットが5組入っているといったようなものです。
私たちの器は鋳込み成形という石膏型を使用した方法で形作られています。
型というととても量産のイメージがあると思いますが、実際には作業のほとんどが手仕事により行われています。
機械で製造する量産の器と比べるとその製造量は六分の一くらいです。
そのため、それらと比べると少しだけ価格が高くなります。
当時、その少しだけ高い私たちの器を引き出物として売り出したいという企業はありませんでした。
そもそも贈りものとして、その店頭にたどり着くこともできていなかったのが20年くらい前の話です。
(昭和20~30年ころの産地の風景)
それ以前は、大きくて派手なものを引き出物として贈ることがステータスであったのかもしれません。
しかし、その器たちの多くは箱のまま収納に片づけられ、使われる機会がなく、あの頃増え始めたフリーマーケットなどで格安に投げ売りされていたような記憶があります。
当時であっても、ものづくりは丁寧に手をかけておこなわれていました。
ただ、生み出された器は、ただ引き出物の様式に組み込むためだけに構成されデザインされていたのではないでしょうか?
ステータスとして贈りたいと思われるような器ではあったのかもしれませんが、頂いた方が使いたいと感じるような器ではなかった事が、何よりおかしな時代であったのだと思います。
(yum yum yummy 子供食器セット)
様子が変化したのは、バブルが崩壊し、一億総中流のような均一的な価値観ではなく、個々の価値観を大切にするきざしが生まれ始めた1990年代後半からです。
様式のような贈りもので、使われることなくフリーマーケットに出されるようなものではなく、贈る側の想いも大切にしながらも、受け取った方に喜んで頂けるようなものを贈りたい。
そう願う方が増え、引き出物の形態に変化が現れました。
ひとつの大きな変化が、現在では一般的となった【カタログギフト】です。
贈る側が何かを選んで渡すのではなく、贈る側が心地よいと感じる道具を集めたカタログを引き出物とし、受け取る側は、その中から好みのものを選択する。
一方通行から、双方向へと変化したこのスタイルは、引き出物の考え方を大きく変化させました。
(crease ペア飯碗)
受け取る側が喜ぶものでなければ選択されないカタログギフトの形態は贈りものを開発する企業に、大きな転換を与えました。
贈る側のステータスだけでなく、受け取る側の喜びを!
そうなってくると、かつてのようにボリュームや内容量ではなく、受け取る側のライフスタイルを大切にした引き出物が生まれ始めました。
例えば、二人で暮らす家庭にコーヒーカップ&ソーサーは5組もいらない、それなら同じ価格でも、上質な飯碗を二つもらったほうが良い。といったような具合で。
こうして引き出物は【大きさ】と【内容量】の時代から【暮らしとの調和】と【質】の時代へと移り変わりました。
(紅白縁起物の器の贈りもの)
この頃から私たちの器にも贈り物としてご依頼が増えました。
そして、贈りもののための器を開発することが楽しくなりました。
なぜなら、良い贈りものであれば、受け取った側はもちろん、同時に受け取った側が幸せになることで贈った側も幸せになるからです。
贈りものを生み出すものづくりは、たくさんの幸せにつながることができるものづくりでもあるのです。
それから、私たちは嬉しさのあまり、多くの贈りものを生み出しました。
深山食器店の『贈りもの(ギフト)』のカテゴリーをご覧いただくとご理解頂けるかと思います。
ちょっと作りすぎたなと反省することもあります。
(mizu-hiki紅白器揃)
5年ほど前に開発した、この水引をモチーフとしたこの紅白の贈りものは、贈る側と受け取る側、両方の喜びを願い、ちょっと思い切って開発した器です。
結果としては、引き出物や贈り物としてとても多くのご依頼を頂けました。
そして、多くの受け取った方から、使ってみたら使い易くて良かったという声を頂いて、とても嬉しかった器でもあります。
改めて、贈りものを生み出すことの楽しさの極致のような一品になったと思います。
「贈られたのちに、使われてこそ、贈りもの」
これからもできるだけ多くの方に幸せになって頂けるような器を開発致しますので、目に留まる機会があれば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。
この下の【関連商品ページへ移動】より深山食器店の贈りものページをご覧いただけますので、よろしければ、もう少しお付き合い頂き、そちらもご覧ください。
2018年08月24日